ペアレント・トレーニング講座の内容は参加者のニーズに合わせて

 

当機関では、年に2回、ペアレント・トレーニング講座(以下、ペアトレ)を開催しています。ペアトレ講座の内容は、日本ペアレント・トレーニング協会が提唱している「基本プラットフォーム」を踏まえています。

 

当然ながら、参加者はそれぞれ異なった子育てのお悩みを抱えて参加くださっていますから、講座の内容も基本プラットフォームは踏まえながら、参加者のニーズに合わせ、その都度、部分的な変更も加えて実施しています。

 

自閉スペクトラム症の傾向がある子どもへのペアトレ

ペアトレでは、子どもの好ましい行動に、親が肯定的な注目(ほめる)を与え、好ましい好ましい行動が増えるよう働きかけます。

この親子の関わりは、ペアトレの中心となっている重要なものです。

 

ところが自閉スペクトラム症の行動特徴を持つ子どもの中には、ほめられても喜ばなかったり、ほめられることを嫌がったりする子どもがいます。

 

参加者にこのことを教えていただきましたので、そのシーズンから鳥取大学方式のペアトレに含まれている、「事前の環境調整」の内容をプログラムに加えることにしました。「事前の環境調整」とは、子どもの好ましい行動が起きやすいよう、環境を整えることです。

 

たとえば、子どもに玄関で靴を揃えて脱ぐ行動を取ってほしいとしたら、玄関の床に靴底のイラストを貼り、靴を脱ぐ位置を子どもに知らせます。

 

また別の例としては、子どもが宿題に取りかかることが難しい時、ランドセルを置く場所と宿題をする場所の位置関係を見直したり、宿題に取り組みやすい生活時間帯を考えていただいたりして、“宿題に取り組む”という行動が起きやすい環境を整えていただきます。

思春期の子どもへのペアトレ

またあるシーズンには、中学生の親御様が参加くださいました。中学生にもなると、親がほめても喜んでくれないどころか、かえって引かれてしまいかねません。

 

そこで、ほめることに代えて、子どもが取った行動を親が言葉にして表わす方法(例:「ひとりで起きたんだね」「疲れていたけど、部活行ったんだね」などの声かけ)、あるいは親が好ましい行動を子どもに指示するのではなく、むしろ子どもに考えさせる関わり(例:「ご飯だけど、ゲーム途中だね。どうしようか」などと投げかけて自分で考える機会を与え主体的な行動を引き出す)をお伝えしました。

 

本来は、子どもの年齢によってペアトレの参加者を分けることが望ましいのかもしれませんが、このような中学生への関わり方は小さいお子様の親御様にとっても参考になったようです。

さいごに

 ペアトレ講座を実施するにあたり、参加者のニーズに合わせてプラグラム内容に修正・変更を加えてきたことを、具体例を挙げて書きました。

 

22秋のペアトレ講座と’23冬のペアトレ講座には、それぞれ赤ちゃんを連れて参加下さった方がいらしたので、赤ちゃん用のお布団をご用意しました。

子育て真っ最中のお母さん達に参加いただき、本当にありがたく思います。

 

ペアトレに参加くださった親御様がペアトレで学んだスキルを用いて、お子様とのより良い親子関係を築いてくださることを願っています。

 

2023年度 秋・冬のペアレント・トレーニング講座の様子。参加者の了解を得て掲載しています。