カウンセリングには、実は数え切れないくらい、さまざまな方法があります。(“方法”を、専門用語では“アプローチ”といいます)
カウンセラーは、各々、自分が使いやすいとか、効果があると思っているやり方でカウンセリングを行っています。
ですから相談に来た方の話を受け身的に聴いているわけではなく、問題解決に向け、専門的なスキルを使いながら、会話に工夫を凝らしているのです(そのはずです)。
カウンセリラーの専門性について、一般の方にわかりやすい表現で書いてみました。
カウンセリングの方法の代表格:精神分析
カウンセリングの方法の代表的なものとして挙げておかなければならないのは、19世紀の終わり頃に、オーストリアの精神科医フロイトが始めた「精神分析」です。
現在でも多くの優秀な方々が精神分析の方法でカウンセリングを行っています。
フロイトは、体の病気はないのに、足が動かない、声が出ない、耳が聞こえない、などの症状のある方を対象に「お話療法(カウンセリング)」を行いました。
これらは「ヒステリー」(心理的な葛藤が身体症状として表れる状態)の症状です。
「アルプスの少女ハイジ」のクララ、「秘密の花園」のコリンの症状もヒステリーと考えられます。
この当時は、女性や子どもは権威やしきたりに従うことを求められ、自己主張が抑えられていたことが症状の背景にあると考えられています。
精神分析では、幼少期の傷つき体験が現在の症状を作っているという考え方に基づき、本人が覚えていないような過去の傷つきを掘り下げ、抑圧されていた感情を解放する作業を行います。
「無意識」という、それまで人類が気づかなかった異次元を発見したフロイトの業績は、天才と呼ばれるにふさわしいものだと思います。
正式な精神分析では、週に4回上のカウンセリングを行うそうで、相談者は寝椅子に寝て話し、カウンセラーは寝椅子の後ろ(相談者の視界に入らない位置)で話を聴きます。
このようなことから、精神分析のカウンセリングを受けると全過程が終わるまで長い時間とお金がかかります。
現代のカウンセリング
時代はくだり、カウンセリングに求められるものも変化しました。
今やカウンセリングは、クリニックや病院だけでなく、学校、企業、福祉機関など、さまざまな場所で行われるようになりました。
カウンセリングの対象も、病気の症状に悩む方だけでなく、病名はつかないけれど日常生活で何らかの不都合を感じている方へと広がりました。
学校や企業で行われるカウンセリングでは、無意識のレベルにまで掘り下げて考えることはほとんどないでしょう。
むしろ現実的な解決を、限られた時間内に目指すカウンセリングが求められます。
例をあげると、学校でスクールカウンセラーが受ける進路にまつわる相談は、適当な進路を卒業まで見つけなければなりません。
つまり、この種の相談には期限があります。
企業で働くカウンセラーが仕事の悩みを相談された場合は、本人の希望する職種、適性、仕事に対する思い、などを話し合っていくことが役に立つでしょう。
カウンセリングの媒体も、電話相談、メール相談、オンライン・カウンセリングといった、新しいものが出てきました。
形態の広がりによって、カウンセリングに必要なスキルの幅も広がり、カウンセラーによって得意とするアプローチや領域はそれぞれです。
筆者(竹田)のカウンセリングのアプローチは解決志向ブリーフセラピーがベースですが、認知行動療法も用いています。
カウンセラーの専門性とは
社会の変化とともに、カウンセリングに持ち込まれる悩みの範囲が広がり、媒体も増えました。
それに応じるように多くのカウンセリングのアプローチやスキルが編み出されてきたのは、必然的な流れでしょう。
カウンセラーには、相談に来た方の悩みをうかがって、どんなアプローチでカウンセリングを行っていくのか、また終結に至るまでのどんな道のりが予想されるのか、そのようなことをおおよそでも説明できる力が問われると思います。
またカウンセラーと言えども、得意・不得意の領域があります。
カウンセラー自身が対応できる範囲を自覚し、自身の領域を越える場合は他機関をお勧めする判断力も必要だと思います。
これからカウンセリングの利用を考えている方、そして現在カウンセリングを受けている方も、ぜひ、「この悩みを相談したら、カウンセリングでは、どんなことをするのですか。解決までどれくらいかかりますか」など、おたずねになってみたらよいと思います。
どのような方法を用いるのであれ、カウンセリングは、相談者の希望に添いながら、相談者とカウンセラーが協同して進めていく作業だと考えています。
どのような悩みでも、解決まである程度の時間が必要ですが、効果が感じられない、相性が合わないと思うときは、カウンセラーに率直に伝えましょう。
(竹田)