ペアレント・トレーニングの歴史、対象としている方、基本となっている考え方などについて詳しく説明しています。
少し長いですが、講座について理解した上で参加したいとお考えの方には、ぜひお読みいただけますと幸いです。
ペアレント・トレーニングは日本ではどのように行われているのですか?
ペアレント・トレーニングは、子育て中の親御さまに子どもへの関わり方のスキルを身につけていただくよう支援する心理教育プログラムです。
元々はADHDの子どもを持つ親を支援するプログラムとしてアメリカで1970年代から行われていたもので、1990年代に日本に導入されました。
2004年の発達障害支援法の制定後、発達障害の子どもを養育している家族への支援ニーズが高まり、自治体などでペアレント・トレーニングが多く行われるようになりました。
日本ペアレント・トレーニング研究会(下記参照)はペアレント・トレーニングの普及、トレーナー養成などを目的とした学術団体で、2000年に活動を始めています。
筆者(竹田)は、日本ペアレント・トレーニング研究会からインストラクター資格を得ています。
*日本ペアレント・トレーニング研究会 https://parent-training.jp/
ペアレント・トレーニングに参加できるのは?
ペアレント・トレーニングが対象としているのは、3歳ぐらいから小学校中学年くらいまでの子どもを育てている方です。
子どもが、親からの言葉による指示を理解できる発達段階に達していることが必要です。
また小学校高学年の子どもは反抗期にさしかかるため、ペアレント・トレーニングの方法が使えないわけではないのですが、もう一工夫加えることが必要になります。
この年齢の子どもの親御さまからの参加のご希望は多く、今後は思春期の子どもの親御さまを対象にしたペアレント・トレーニングも行っていきたいと考えています。
また当施設は医療機関ではありませんので、お子様に発達障害がおありかどうかは参加の条件にはしていません。
ペアレント・トレーニングはなぜ効果があるの?
ペアレント・トレーニングで用いる方法は、心理学のひとつの分野である”行動理論”という考えかたに基づいています。
子どもの好ましい行動をほめてふやし(これを”強化”と言います)、好ましくない行動は無視して減らす関わり(”消去”といいます)を行います。
また子どもが起こす困り事を”行動”という単位でとらえることも、ペアレント・トレーニングの特徴です。
子どもの行動を観察して「好ましい行動」「好ましくない行動」「 危険な行動」の3つにわけていただくことから、トレーニングが始まります。
参加者には、この”行動”というとらえ方がとても新鮮に映るようです。
子どもの困った行動が起きないように、あらかじめ周囲の環境をととのえておく考え方も学んでいただきます。
ペアレント・トレーニングの方法を身につけることで、親が子どもを叱ることが減り、同時に子どもの好ましい行動が増えれば、親子の信頼関係が深まり、指示がスムーズに入るようになって、子育ての負担感が減ることが期待されます。
ペアレント・トレーニングの講座では何をするの?
ペアレント・トレーニングは2週間の間隔で5セッションのスケジュールで行います。
スタートから終了まで8週間のスケジュールとしているのは、人の行動に変化が起きるためには、ある程度の時間が必要だからです。
日本ペアレント・トレーニング研究会は「基本プラットフォーム」で下にあげる内容を必ずプログラムに含めましょう、と提唱しています。
当施設で実施するプログラムは、このすべての内容をカバーしています。
1.子どもの行動観察と3つの分け方
2.子どもの行動の仕組みとほめるパワー
3.達成しやすい指示とスペシャルタイム
4.待ってからほめよう(無視)
5.振り返り ほめるための準備(環境調整)と伝え方
1回のセッションは1時間半で、毎回、次の3つのことを行います。
①講義
②ロールプレイ
③宿題の説明 前回の宿題の報告
子どもをほめたり、無視したりという技法を、頭ではなく、カラダで身につけていただくために、ロールプレイで練習し、家庭に帰ってから実際にやっていただくことがとても重要です。
実は私は恥ずかしがり屋で、ロールプレイが苦手なのですが、参加者の見本になるよう、毎回、がんばっています。
ペアレント・トレーニングはなぜグループでやるの?
ペアレント・トレーニングは4~6人程度の複数の親御さまのグループで受けていただきます。
グループで学ぶことで、「子育てで悩んでいるのは私だけじゃない」という安心感が持てたり、他のメンバーの関わりの工夫がヒントになったりすることもあるでしょう。
何よりひとりで学ぶよりも仲間がいる方が、励まし合いながら楽しく学ぶことができます。
これまで複数のグループにペアレント・トレーニングを実施させていただきましたが、毎回、私自身がグループから力をいただいていると感じます。
さいごに
ペアレント・トレーニングの良いところを書いてきましたが、ペアレント・トレーニングで子どもの困った行動をすべて解決できるわけではありません。
個別に対応を考えなければならない困った問題もたくさんあることでしょう。
またペアレント・トレーニングは、子どもの発達障害を治したり、子どもの性格を変えたりするわけではない、という点も合わせてご理解いただければと思います。
ペアレント・トレーニングを多くの方に受けていただき、子どもとの関わり方のコツを身につけていただいて、子育てがもっとラクに楽しくなるよう、お手伝いしていけたらと思っています。
(竹田)